2005年12月02日

耐震強度偽装マンション問題を考える。

バブル以降の所謂『手抜き』とは、「室内の仕上げ(CFの波打ちや、壁クロスのボトムになる幅木の仕上げ等)に手抜きが多いね」という話は聞きます。昨今の新築ラッシュ(無理な工期の短縮化)で「資産価値として大丈夫なんだろうか」という内容です。
物件全体の構造強度も含む話ですが、構造強度とっ言っても「コスト意識で合理化されているので、耐震基準以上の物量投入が考えられなくなった」とか「コンクリートの質(特に砂利)が、昔の方が随分と良かった」とか「コンクリの基礎強度確保のための、養生が十分なのか」とか「偽デザイナーズ打ちっぱなしコンクリートの質と仕上げに問題があると、外観の損傷が早く家主さんが大変」という話で、まさか地震で倒壊って話ではありません。

古築で内容のいいものはコンクリートの状態や柱の太さも目視で確認できる上、内容のいいコンクリートであれば経年変化で“ほとんど石化する”(実際に「ドリルが入らない」という話を聞きます)ケースもあり、「一概に古築なので強度が弱い」とは言えないのです。
ゼネコンの系の推定では「亀裂等の手入れをキチンとしていれば60年〜100年保つ(内部の鉄筋に錆が入ると寿命)」とされています。

※築20〜30年のマンションを「熟成されている」と呼んだりするのは、コンクリートが固まる化学反応の熱(水和反応)が完全に冷えるのが「一般には10年から20年(30年から50年という説もあり)」だからです(水和反応は永続的に進行し、完全に反応が終了する時間は特定できない)。

※耐震基準見直し以降の非木造住宅の構造強度DATAはそれ以前のものより向上しています。
しかし神戸の震災におけるDATAを見ると『倒壊又は崩壊』に至ったRC建築物は「〜1971年で11%」「1972年〜1981年の構造被害グラフは1982年〜とほぼ一致していて約3〜2%」と、その違いは全体でも1%〜5%の差なのです(1971年の建築基準法施行令改正、1981年の建築基準法施行令の改正は新耐震設計法の採用だが、安全性向上は1971年の改正が大きく一部の項目では81年改正後の方が破損率が高いものもある)。
構造上注意が必要なのは「1971年以前の鉄骨造」等、かなり特定のケースです(ほとんど取り壊されています)。
又、区分所有ではない賃貸マンションなら「共有スペース」という概念がありませんから、資産を維持する動機としては分譲より安心感があります(つまり古築であるという理由だけで、構造強度に心配のあるものは外観からかなりの部分が判断できます)。
むしろ「1990年代バブル建造物の手抜き建築」が話題になるぐらいです、
確かに全体として見るなら1981年以降の耐震基準で建造されたRCの方が「技術的に地震に強い」ですから、資産価値を心配される(分譲等の)場合には後者の方が安全です。



「新築で倒壊の恐れあり」
これは衝撃的な事でした
■今回の事件は明らかに「確信犯的詐欺」であり、これは刑事事件です。

住居利用の分譲について、現況を簡単に説明するなら、
ブログで内容のいい古築をよく取り上げている当社は、中古売買を勧めていてもおかしくありませんが、築年数が古いと「その後の売買価格が十分に予測できない」ので、資産価値としてのリスクが高いのですから、「耐久消費財的購入」や「暮らし倒すための購入」「投資ではなく“大家さんになる”ための購入」ならお勧めしていますが、「資産として転売を折り込む中古売買」はお勧めしません。
「資産リスクを家主が既に引き当てている賃貸住宅の方がクレバーな選択だ」と考えているのです。
特に高齢化社会と少子化等、現代の暮らしの形態は流動的です(離婚率も50%越えています)。「東京の暮らし」というテーマから見ると、賃貸をベースに考える方が自然です(「分譲向きの要件」というのがあるのです、これは「特集分譲か賃貸か」で取り上げます)。

ブログの内容からも「築浅と新築は別物」と考ええいます。
(retourは築浅信仰に否定的です。)
又、木造建築については「逃げやすい」事と(ですから1階アパートも悪い選択では決してありません)、死亡事例で最も多いのは火災(なので石油ストーブは禁止)ですから、高層非木造建築物における倒壊リスク(逃げられない)と、木造建築の地震リスクは考え方自体が違います。昨今の2×4高性能住宅は耐震性についてもRCマンションと同等の性能を持ちますし、文化財となっている神社仏閣等、内容と地盤が良ければフレーム構造の木造建築物も倒壊しません。
※火災となると、ご存知の通り高層住宅には違う意味のリスクがあります。
木造で怖いのは延焼による火災の恐れですが、こちらは接道等の都市計画の話になります。


■今回の『事件』の背景、昨今の新築事情

「明らかな供給過剰」これが現実です
金融サイドからもミニバブルと言われているような資金の流れがあるのは確かで(昔と違って、転売目的の無い分譲や賃貸住居等に対する融資ですから不良債権にならない)、その背景は「低金利」です。低利でも安定的な利回りが見込める(現物があるワケですし)不動産は(投資ファンドとして証券化され)金融商品のひとつになっています。
元来「利回り10%」が不思議では無かった不動産投資の環境で「利回り5%は堅い」という見方自体は間違いではありません。
ところが、所謂ファンド系の建築物件は「市場分析が甘い」面があって、潜在的な「ニーズ」と必ずしも一致していないため、結果的に「近隣の賃貸住居と同価格なのに新築」のような線上で満室を狙うものが多くなっているのは確かです。礼敷条件の大幅緩和が、結果として法人利用の短期賃貸借契約を集めてしまったり(賃貸において「短期退出」は、採算性を大幅に悪化させるのです)、悪循環になる事もあるのです。

東京の世帯数にも限りがあるのですから、シングル向けの投資用住居を何棟も建てることが建設的なワケも無く、地域によっては既に2DKタイプのファミリー向けはダブついている現況で、潜在的には「広めのシングル」「1LDK」「2LDK」へとニーズはシフトしているなかで、「1K(20uランク)」「2DK」「3DK」だと構造ギャップも埋まりません。

つまり、想定利回り5%でもリスクはあるんです。
それでも供給が続く背景に「低利融資」の存在があります。
実際に動いている金利は、みなさんがご存知の数字だけではありません。支店長決済で大口顧客には低利融資の話が持ちかけられます。
つまり、少々の供給過剰があっても低利融資なので「金利より上ならいんだから、賃料を低めに設定すればいいか」となり、「証券化された不動産投資は確実な金融商品」とは言えないのです(5%も廻らないとか、運用自体に失敗する可能性もあります)。
最近流行りの「リノベーション古築マンション」という強力な対抗馬もあります。旧ファミリー向けをシングルユースに改装すれば「広めで内容のいい部屋を提供できる」ので、市場の潜在ニーズとのギャップの無い間取りに改装されるからです。

このブログで「新築は別の意味で得」と言っているのは、賃貸の立場から見れば「昨今の新築は割安感が非常に高い」からです。
又、ファンド系は「分譲」にするのか「賃貸」にするのか市場を見てから決めたりしますから、これが賃貸に出ると「全室分譲ランク」になるため、設備面でも一般賃貸にに差をつけます。
ですから、間取り内容も煮詰められている現代の新築は『性能評価的な内容で最強』なのです(ドラム式洗濯乾燥機なんかが付いていても「私洗濯機持っています」な事にもなるのですが、、)。


そこから見えることは“圧倒的に賃貸の方が選択肢が多い”って事です。ほとんどノーリスクなんですから。資産にならないって意見もあるかもしれませんが「掛け捨て保険」のように考えれば見方は違ってくるでしょう。
高齢化の将来が見えない現在、分譲は慎重且つ計画的に考えるべきもので、
「基本的には賃貸でいいか」これはアリです。

そんな昨今の賃貸住居の動きの中で、住宅ローンの金利が何パーセントになるのか良くわからない分譲は有利か?(この辺のお話は近日中にアップ予定の「特集分譲か賃貸か」で詳しくお話します)「賃貸より月の支払いが安い」等の広告を額面どおりに受け取らず十分に内容を検討しなくてはいけないのです。


実際「マンション用地探しています(一般広告に出ていない話の意味)」という営業はひっきりなしに来ます(「聞いた事無いぜこの会社」なんてとこらも話がくるのです)。
『国内設備投資が回復していない今、不良債権問題はほぼ解決しているので「低金利政策の結果」、そのまんま、マネーサプライが不動産に流れている。』
背景は意外と単純なものです、
実際郊外の売買でも、「第一期募集完売〜〜最終募集は大幅割引」なんて話はよく聞きますから、供給過剰の中で「完売」を目論むためには、立地やブランドがよっぽどしっかりしていない限り難しいのです。みなさんも一度ぐらい「マンションいかがですか?」という売買営業の電話受けたことあると思います。売買の営業っていうと法律違反覚悟の看板と、ビラ撒き、電話攻勢等ご存知の通りです。常に完売とは限りません。



そんなバックグラウンドの中に「平均100u超の永住型マンションにこだわり、5年連続平均専有面積日本一(首都圏6年連続No.1)」のマンションが販売されたのです。
近隣相場を覆す安さ(u単価)の分譲マンション、
「恒和不動産」に始まり→「ハウジングセンター」を経て→「株式会社ヒューザー」
「グランドステージ」シリーズで成功したその秘密は「耐震強度偽装」の「違法建築」だったのです。
※「グランドステージ」シリーズ全てが「耐震強度偽装」という意味ではありません。国土交通省の調査結果を待たなければ今回の「耐震強度偽装」の全容は明らかにならないでしょう。

・マンションは「ヒューザー」が、
・ビジネスホテルは「株式会社総合経営研究所」が
「平成設計(木村建設の設計部門)」「木村建設」「姉歯建築設計」は、その組織の『低コスト』マシーンだったのでしょう。

「背景にはもっと何かあるんじゃないか?」が正直な感想で、
これは手抜きとかのレベルではなく犯罪です。


不動産業に携わる者として、この「耐震強度偽装」はとても恐ろしい話で(偽造によって検査をパスしてしまっているのですから)、購入された被害者の方のショックは計り知れないでしょう。
「特集分譲か賃貸か」近日中にアップの予定ですが、今回の事件の内容を踏まえた特集を予定しています。
posted by iwahara at 03:11 | Comment(0) | TrackBack(9) | 売買や賃貸の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


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