2007年06月07日

『分譲か賃貸か?』(前編)

今回は「昨今の分譲」をメインテーマに話をして行こうと思います。その対比の中で賃貸の存在理由も明快になってくるのじゃないかと、

最初は誰しもが最も気になる価格の背景「市場」についてです。
「市場」なんて言葉を使うと一見経済学的な需要と供給のバランスで最適化された相場が頭に浮かびますが、現在の不動産相場の在り方はそれとはかなり異質のものです。『時制』という点だけで見ても「完成前に完売御礼」等の背景にも「第3次募集で大幅な割引」なんてケースもありますから、完成前の一ヶ月の間にすら資産価値は変動しているぐらいの勢いでその市場が特異だってことがわかります。
話をわかりやすくするために表現を極端にするなら、
@「不動産市場にはマクロが存在しない」からです。
不動産市場におけるマクロ的評価ってものは経済学の分析なんかの時には重要なものですが、現実の取引は「その物件1に対して売主1買主1」というミクロ経済で共通の取引はほとんど無い(物件はは1戸1戸違う)ため、マクロも何も「その部屋」からいきなり「東京都の住宅供給量」にまで話は飛躍します。
例えば「造作された暖炉はAさんには200万の価値を持つが、Bさんには無価値だ」なケースはいくらでもあるのであって、市場価格とは『流通しているu単価のサンプルに過ぎない』のであって、車の生産のように流通経路が常に安定していて同じ商品が多数の在庫によって担保される事もありませんからマクロで分析する事は全体像を図る事ができてもそれは参考に過ぎません。

「私にとってこのマンションは1億の価値がある」と当事者が断言すればそこには1億の価値が創造される事になります。この評価はその人物が購入者であれば「one」でいいのです。
現実ではどうなるでしょう?
今暮らしているマンションを中古で売却しようとする時「その人(one)が現れるまで1億で募集しよう」これは可能です。大問題なのは「それは一年以内に売却可能か?」という時制の部分の評価で、ここって正に『金融商品』なんです。
長期間売れない資産は、利回り換算でも損益が含みで増える事を意味しますし、それこそ巷の『現金問屋』さんが何故格安で仕入れができるのかって言えば「現金」だからです。
オークションされている方ならこの辺どなたもよくご存知ですよね、
最低希望価格を設定し延々更新を続けるのか?即買いの設定するのか?
■同じ商品は「決して同じ取引価格にはなりません」
しかし”その流通速度”を図る目安はマクロ的な相場にならざるを得ない。
だとするなら、不動産市場の評価には複数の視点が必要で、「極端に引いたところ」と「個別の物件内容」の双方を区分けして考えないと全体像を見失ってしまいます。

「極端に引いたところ」で、今何が起きているでしょうか。
最近は流石にマンションを供給可能な土地の不足で仕入れ営業の動きが鈍くなりましたが、一時なら毎日マンション開発業者の営業担当者が土地の仕入れ調査で地域の不動産会社に来店し、「一日に何人も来た」なんて事も珍しくありませんでした。
開発業者の背景には当然巨大金融資本があり、開発の可能性のある土地は先ずマンション開発業者か建売分譲業者が買い付けてしまいます。
とても簡単な話です、一般消費者が土地を買うなんて余地は最初から”ほとんど無い”んです。「分譲という既製品しか買えない」という事情を前提に以下の流れを追ってみてください。
※『既製品』と言えばリノベーション用の素材となる中古マンションもなかなか手に入れられません。高額な改装費用を乗せてリノベブランドとして売却する改装系業者が消費者にとって有力な競争相手だからです(この辺の盲点をついての中古素材マンションの購入等仲介のアドバイザー抜きには難しいものです)。

T資産価値の評価として、転売価格が心配な消費者心理から『ブランド名のあるマンション』や『新築・築浅マンション(築浅信仰)』に人気が高まる

ここの背景には、不動産知識の専門家とは言えない消費者心理もうかがえます。
実際不動産の仕事をしていて感じる事に(HPのコンテンツに「間違いだらけの部屋探し」書いているぐらいですから)「一般消費者の不動産知識の大半は間違っている乃至広告等によって誘導されている」と実際感じています。それは当然当たり前です、売買に至っては投資家でもない限り不動産取引自体の機会が一生に1回あるかないか程度の頻度であって、そんな一般消費者が不動産業の知識において熟練する事は構造的に不可能です。そんなニーズから「不動産仲介:エージェント」や「コンサルタント」ってシステムがあるのですから。

ここで大問題です、
一般に賃貸住居の空室募集は、国土交通省の指導の結果「そのほとんどが各正規の不動産業者に情報公開され=仲介(小売の立場)可能である」と言えます(それこそ非公開にして空室が続いたら大家さんにも迷惑ですし)。それでも一般に自社管理物件を成約すれば不動産会社の利益は倍になる(問屋としての広告営業費と小売店としての仲介手数料を分けなくてもいい)ので、自社管理物件しか紹介しないケースや(管理会社系の会社の場合にはそもそも仲介の業務が無い場合もあります)、来店を促して強引に申込みの追い込み営業をかける等の問題もあります。しかし情報公開の結果積極的に仲介営業を業務にしている不動産会社に問い合わせれば一般消費者が「ほぼ市場全ての空室情報を一元的に入手可能」である事は間違いありません。
ここが『新築分譲』になると「かなりの数の物件情報が仲介業者に非公開=仲介の問い合わせをしても門前払い」になるのです。
(ここはグレーで相談可能な場合もあるのですが)
販売営業に当たっている業者がそのまま開発業者=売主であったり、専属代理店や子会社にこの営業を一任させるなど、「現在の市場環境だと売れ残りの心配が無いので下手に仲介営業(当然他社の物件と比較しながら顧客にアドバイスをする)なんか入れない方が得策(同時に貸主ではない限り賃貸のケース同様営業収益も高くなる)」という一面が見え隠れします。
※「分譲完売」が続く中、当然不動産業者に対する情報公開が「公開か非公開か」だけで物件の内容の良し悪しに比例するとは言えません(売る側からすれば「それでも売れちゃう」のは事実なんですし)。

ここで不動産取引の経験ある人ならちょっと疑問に思う事があるでしょう。
「仲介手数料の請求ができない(=仲介を入れても会社収益には関係無い)売主でも情報非公開とするのは何故か?」です、
ここもちょっと前述と被りますが、実際の話売買価格の設定は自由なんですから窓口に来た購入希望者が素人である方が営業上も有利に話を進められますし、実際購入って話になってから「オプション契約」がついたりして当初の予算をなし崩し的にオーバーしてしまう事もあります。
そんな席に「お客さん、この内容はちょっとおかしい」とアドバイスする仲介不動産の営業は「いない方がいい」んです。

しかし
新築分譲系の物件なら高額な広告費を前提に一般消費者が情報をダイレクトに入手できますから、ここの情報は消費者が自分で集める事ができますから、非公開物件でも仲介不動産会社がその情報について分析し助言を行う事は可能なので、仲介が無理な場合「自分で集めた情報をコンサルタントとして助言してもらえないか」等打診してみるのが一番で、会社の営業上コンサルタント業務を行っていない会社でも、話を聞いてくれる会社は多い筈です。
そうして情報をプルーフしていかないと、風評や消費者心理で判断が偏ってしまったり販売会社の営業トークにのまれてしまう事もあります。
※ここの情報のプルーフが行われないために、現行市場の心理的背景は既に偏っていると考えてもいいのです。


U住宅ローンと金融サイドの評価

担保価値で考えるとどうでしょう。
「その金額は妥当ですよ」という評価を実質的には、金融サイドが行っているのも同じと言えます。借地権等取引評価が難しい案件となるとその担保価値が下がったり(実価値がどれほど高くでも)、不動産物件の中には住宅ローンが不可能な物件さえあります。
しかし、実情はそのほとんどが住宅ローンによる購入である現状金融機関の物件評価は市場にも影響している環境で(その物件の担保価値を緻密に評価するというより住宅ローンと言えばもっぱら申しみした消費者の所得審査である)「新築分譲をどんどん買いましょう」なお墨付きにもなっています(これは心理的意味でも)。
※話はそれるけれども一般に金融関係の住宅ローン広告の金利ってのは「よほど資産内容や勤務先が優良な申込み」である場合で、実際申し込んでみると「あなたの勤務先だとこの金利」と全然想定外の金利となる場合も多い。かといって「冗談じゃない」と強気に断ると”審査落ち”の信用情報として流れる事もある。

ここを少し詳しく説明すると
マネーサプライの流れによって形成されるマクロを背景に『価格』が高いことと『価値』が高いことが心理的にごっちゃになる。つまり流通する事による既成事実が物件価値の仮想上の裏付けとなります。
「あなたの所得は心配ありませんが、そもそも担保価値としてこのマンションは高すぎるので満額の融資はできません。と各分譲マンションの売買の場でマネーサプライの不足による売れ残りが多数」いう報道を聞いた事がありません。
J-CASTニュース『“億ション”425戸が即日完売』(2006/8/16 )
http://www.j-cast.com/2006/08/16002555.html
不動産経済研究所が発表した2006年7月の首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県)のマンション市場動向調査によると、発売初月の契約率は80.0%と前年同月より3.2ポイント下落した。一方、東京都港区では平均価格約1億2千万円の425戸が即日完売した。

ところが中古マンションの場合だと固定資産税課税基準ともなる耐用年数等の内容から半ば一方的に住宅ローンの融資額が「60%(新築・築浅だと一般的に80%)上限ですね」となる場合があるので、現実問題として『転売を考えても築年数が浅い方が売りやすい(中古で買う人の住宅ローン評価もも売りやすさの条件の一部)』と誰しも判断するでしょう。
つまり巷では「へーこのマンションって”幾らなんだ”」とほとんどの人が納得していて一般消費財のように「これ原価幾ら?」と尋ねる人は少ない。
※現実問題都市銀行によっては、バブル当時からの経緯で不動産取引を業務としている場合もあって部署によっては「不動産業務的に資産評価する事も可能」というか、その潜在能力はある”筈”ですが、もしですよ、銀行窓口の住宅ローン担当者が「あの新築マンションにはとても貸せません」なんて言ったらどうなります?
ローンの総額でも50億〜越える事だってあるんですし銀行にとってもビッグビジネスです、そもそもそのマンション開発計画に”その銀行”が融資している事だってあるんですよ?(極端な例だと「元その銀行の不良債権である場合もある」)
銀行員の立場になって考えれば、その背景は誰にだって想像つきます。

しかし、そんな市場は世界的にも一般的なのかと言えば?
楽天よくわかる住まい講座:マンション市場の現状と展望
http://house.www.infoseek.co.jp/column/home/001/
日本の住宅市場は、新築住宅中心に形成されています。アメリカやイギリスでは、新築住宅着工数より中古住宅取引数の方が多く、一方日本の中古住宅流通量は新築着工数のたった1/10程度。
バブル期でも6万戸程度だった首都圏の新築マンション供給量は、ここ数年、10万戸以上供給され続け、平成15年度には12万戸にも及びました。新築マンションブームというより、もはや供給過剰状態と言えるでしょう。
http://house.www.infoseek.co.jp/column/home/001/index2.html
日本の住宅の代替わり周期(建替え周期)は、築30年程度です。イギリス141年、アメリカ103年と比較しても極めて短い数字。

この辺トータルで見て初めて全体像見えてきませんか?
■TとUで食物連鎖の循環みたいなものがあって、新築分譲はどんな価格でも「売れやすく(マネーサプライの環境として)」、中古マンションの市場は結果として「実価値より低め」となる市場構成となり中古マンションを流通させたくても、今の市場じゃとても売りにくい(供給する側のオーナーも下手に動くと「損切り」になってしまうので躊躇する)環境にあって、供給過剰であるのに何故か市場の供給量は少ない、
同時に消費者にとって現在の売買の環境は『既製品しか買えない実情』である。
「新築分譲人気が既成事実として一人歩きし、不動産知識のない消費者は疑う事無くこれに傾き」、、
何が見えますか。

<つづく>
posted by iwahara at 11:04 | Comment(2) | TrackBack(0) | 売買や賃貸の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


この記事へのコメント
つづきを楽しみにしております。
Posted by 虎子 at 2007年06月07日 22:18
ええ、一部危険を顧みず書いている部分もあるので(笑、かなり慎重に原稿仕上げているところです。

ゲラは既に出来ておりますので、土曜日までには間違い無く(冷や冷やしながら)アップしますよっ
Posted by iwahara at 2007年06月07日 22:47
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