所謂業界的な評価として「都市部の不動産は15%程度の供給過剰」と知られてきましたが、
■直近の動向がかなり詳細に報道されています。
賃貸住宅、異常な「大余り」状態…アパート空室率が約4割の地区も、老朽化で管理放棄も
http://biz-journal.jp/2016/08/post_16114.html(一部引用)
2014年4月の消費税率引き上げ前に住宅着工は駆け込み需要で増え、4月以降は落ち込んだ。しかし、貸家は減少が軽微で持ち直しも早かった(上図参照)。2015年1月に相続税課税が強化され、地主の節税対策としての貸家建設が増えたためである。相続税の計算では、貸家が建つ土地の評価を下げられる。賃貸住宅の建設は従来も節税対策で後押しされてきたが、相続税の基礎控除縮小など税制改正が拍車をかけた。
細かい数字は上記リンクでチェックいただくとして、
(調査内容で数字が大きく違っちゃっているところは困ってしましますが、)
総務省などが公開している「東京都内においても都心集中が進む動向」などと合わせて考えてみれば、都内であっても郊外の木造アパートの空室率が冒頭記載のこれまでのアバウトな評価を超えて(15%程度の供給過剰)、想像上に拡大していることがわかります。
引用記事にあるように(半ばそこに答えも書いてあるのですが)、郊外木造アパートなどが間取り改変で30u以上を基本とするリストラに成功すれば、”戸数としての統計”ですから、一気に供給過剰状態は改善しますが(木造建築であれば間取り改変などの工事も容易)、大家さん心理的に「ある程度の指針」のようなものが公から出てこないと問題解決も遅れるでしょう。
簡単に言えば「改装などに対する補助金などの優遇措置」のことです。
記事にもあるように、賃貸住宅は空室率が高いから入居を促すために無限に賃料を下げればいいというものではありません。収益率が下がり過ぎると維持管理ができなくなってしまうからです。
『住まいの心理学』などでは”都心のRC造ミニマルコンパクト論”などを展開している私ですが、郊外の木造アパート空室率の今後を考える場合は「間取り改変により世帯数を減らして部屋当たりの床面積を増やす」方策がベストであると思います。
「都心の17u1Rと郊外の30u大型ストゥディオは同じ賃料」←このような対比があれば、賃貸住宅のバリエーションが増えることで生活の豊かさも拡大しますし、地域行政が「賃貸住宅補助」を拡大していけば需給ギャップは貸す側借りる側双方にとって有益な方向に解決すると思います(おすすめは保証会社の掛け金を行政が負担したり、高齢者の緊急連絡先を行政とする制度の導入や確定申告時に賃料の一部を経費として認める「賃貸住宅減税」などなど)。
経企庁や財務省の目論みじゃありませんが「床面積の増加には景気浮揚効果もあります」。
この促進に財政出動行ってもリターンあると考えます。
大家さんとしても、確かに管理部屋数の低下は「空室リスクの恐怖」でもありますが、行政指導で地域一帯の空室率が改善するのであれば実に合理的な選択になります。
第一不動産投資の利回りが若干低下しても管理している水回りなどの基礎的設備の個数も低下しますから、表面利回り総額は低下しても実質利回りの低下は抑えつつ空室率の低下により収支計算も安定してきます。
■補助金行政の不公平による弊害は後日『住まいの心理学』ブログに別途記載する予定ですが、
とにかく、
”とにもかくにも”経企庁や財務省は頭が固くてですね、、、
景気対策としての優遇措置は常に分譲購入などの持家関連の政策に傾斜しています。大手デベロッパーの陳情含めて業界サイドの事情があるのもわかりますが、地味にも見える「賃貸住宅対策」こそ現代社会では重要なのではなかろうかと思う次第でありまして、
賃貸住宅の流通円滑化は誰にとっても利益になりますから、是非検討いただきたいと思う次第です。
ちょっと話し逸れます。
個人的意見でもありますが、「規制の曖昧な民泊」や「シェアハウス」を増やす政策は好ましくないと思います。
受け入れる地域の合意あっての住宅政策ですし、上記住宅は概念としては「事務所可な部屋」と大きな違いの無い事業建築ジャンルへの転用です。その辺の判断曖昧なままに規制緩和だけ先行させれば用途指定を含む不動産法制の根本がグダグダになってしまいます(下手すると地価下落に繋がる可能性もある)。税府がデフレ経済からの脱却をテーマにしているこの時に手を出す政策では無いでしょう。
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posted by iwahara at 06:02
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売買や賃貸の話
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