まずとっかかりとなる報道を並べてみます、
データ改竄の現場管理者は「ルーズな人」「キャリア15年ほど」 旭化成建材役員が印象語る
http://www.sankei.com/affairs/news/151023/afr1510230001-n1.html
マンション傾斜、国交省厳しく対処 旭化成側に3040件連絡指示
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ23HQY_T21C15A0EA1000/
くい深度最大1・3メートル不足 三井住友建設、住民に説明
http://www.sankei.com/affairs/news/151025/afr1510250004-n1.html
北海道発注工事でデータ流用=改ざん社員と別か−旭化成建材
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc&k=2015102800980
旭化成建材 横浜市の公共施設でもデータ流用
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151029/k10010286741000.html
マンション施工不良 元現場責任者、不正なくい打ち「日常的」
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00306740.html
全体像的な話は「住まいの心理学」にちょこっと書きましたので、興味ある方はそちらも読んでみてください(そもそも大規模マンション建設の立地なのだろうかという話です)。
さて、問題の事件ですが、
誰に主体的責任がみたいな話の結論が出るのは相当先になるのではなかろうかと思います。
最近の報道もすっかり「買取や賠償の話」に移ってきてますね。
●大規模マンションの話と言えば、随分昔になりますが某建築家さんとの話に「そう言えば湾岸のどこやらに昭和の有名なのあるけれど、あそこは液状化で地盤が悪いから巨大な基礎がさ船みたいな仕組みで緩い地盤の上を併行移動しているって話があるよ」なんてのがありました。
この基礎の話って、今回の『支持杭』では無くて『摩擦杭』の話かな?とも思いますが、確かに代々木の名棟のひとつも(コンクリートでガチガチの岩石塊みたいな奴で地下駐車場が要塞状態)頑強な棟の周囲で表面だけ舗装された部分が波打つようによれているんですよね。
上記建築が工法的にどちらなのか詳細はわかりませんが、今回の事件が投げかけているものは「大規模RCマンションともなれば建築が建築だけに購入者には(消費者として)建築の知識も必要になる」という事だと思います(同じローンで購入される商品の代表例である自家用車購入でもエンジンの形式など一定の知識を必要としています)。
事実、分譲マンションに詳しい人は「床の遮音建築仕様」などにも明るい人少なくありませんが、とてもとても流石に今回のような杭の工法までの知識を求めるのは無理があります。
更に報道されているようにやっかいなのは立て替え含めての自主管理決議の問題です。
retourは分譲マンション懐疑派であり、先日紹介したビンテージの『サンシティ』のような中古マンションはリスク部分が経年によるプルーフされているだけで無く、往年のゼネコンによる当時渾身の建築時代であることから例外と考えています。
http://retour.seesaa.net/article/418909292.html
中古マンションであればことほど左様に管理組合の運営や建築時の時代考証なども外から評価できますが、新築分譲マンションの場合どれほど建築の知識があっても管理組合の運営はこれからヨーイドンですし、施工会社の状況も現在進行系ですから全くの未知数になります。
(法制の再検討が必要なのではないかの点は住まいの心理学記事に記載のとおりです)
あまりにもリスクが大きい。
『サンシティ』の現地内覧会前には「まず賃貸契約から購入希望となった場合」も検討していたぐらいです。ハイリスクな分譲マンションの購入において一生の間で最大の融資を受けて一発購入という流れは、、あまりにも無理筋です。
(というか建築業界全体にある”新築志向”それ自体に論議が必要でしょう。)
冒頭説明のとおりで、大規模建築になればなるほどその工法含めた技術的背景も高度になってきますから、一般購入者には理解することすら難しいですし「大手ゼネコン施工のブランドと信用」重視だとしても反面意欲的な新興住宅メーカーの建設を判断できない事にもなり、
たとえばの話になりますが、メインバンクが何らかの保障を予め設定してみたいな「分譲保険」のようなシステムや、管理組合においても専門性のある代理人として機能するNPOなどが延びてこないことにはリスクを回避が放置されているのと同じです(誰にでも同様問題が起こり得る)。
※賃貸住宅契約ですら仲介代理人が借主弁護人的立ち居地から内容の説明など関与するのに。
■賃貸住宅はこの点ノーリスクですから、retourはぶっちゃけ「東京だからこその賃貸派」となりますが、不動産の本質は「土地付き戸建て」です。←ここはある意味資本主義社会の存在証明です。
しかしどうでしょうか。
このブログではあまり心理学の話はしないようにしているんですが、『土地に帰属する所有権』というようなものは概念として後期先進国社会にとって「ケースバイケース」なのではなかろうかと思います。
確かに地方では(ローカル『共同幻想』論ではありませんが)不動産の構造的に「土地付き戸建ても安価ですし人口密度も緩い上に慣れ親しんだ土地ですから予測されるストレスも少ない」事になります。分譲マンションはその構造から「本来都市部限定の存在です」、
図式を俯瞰で見ると、大都市などで不動産所有権を購入するのは”大金持ちの人”だけで十分なのではないかと思うんですよ(賃貸には『分譲キラー』のような高級建築だってあります)。
大金持ちの人なら分譲マンション固有の問題が発生しても個人で弁護士を雇うことだってできますが、一般的サラリーマン世帯がそういうリスクを背負うのはあまりにも重いです。
一般サラリーマン世帯都市生活は都市構造論的な概念として「他の金融資産などを購入し、不動産に関してはその後を考える方式」のが自然なのではないかと思うんです(不動産相続の点からも合理的だと思います)。
言葉は悪いんですが「現状の売逃げ方式の分譲販売」、制度としていかがなものかと。
(30年ローンが事実上のサブプライムローンである事もほとんど報道されていません。)
中断説明に戻りますが、都市建築における業界・政府全体に及ぶ高度成長期と変わらない”新築志向”にはRC建築の耐用年数期待値からも無理があり(理想は100年建築)、木造時代の大工さんはそういう発想では無かったのではないかととも思います。
果たして今回の事件の調査がどこまでの論議に及ぶのかまだ未知数ですが、杭工法だけであるとか一企業だけの問題に矮小化されてはいけないだろうと思います。
(※retourは今後も賃貸推奨・新築分譲懐疑派のスタンスでいきますけどね。)